ヴァイニング夫人

Elizabeth Gray Vining "Return to Japan" 読了。
エリザベス・グレイ・ヴァイニング(1902-1999)は戦後直後、4年間ほど今上天皇の皇太子時代に彼の英語の家庭教師をしていたひと。そのときのことを書いた前作といえる『皇太子の窓』(ISBN:4163430407)はけっこう有名らしい。彼女はクエーカーのクリスチャン(しかしキリスト教徒のなかでクエーカーっていうのはどういう位置づけなんだ?)。
本書はその彼女がその後2度に渡って再来日したときの様子を描いた本(どうも翻訳はされてないみたい)。基本的には紀行文であり、日本滞在時の友人たちとの思い出を綴ったものでもある。なかで登場するのは、すっかり大人になった明仁皇太子、貞明皇后大正天皇皇后)、"The Last Samurai" 山梨勝之進、小泉信三など。初舞台の中村勘九郎(当時3歳)まで見てるっていうのはなるほど時代を感じるね。
3度目の来日(1959年)は皇太子と美智子妃の結婚の儀に出席するため。最後の5章は全部これにあてられている。ちょっとクリシェ的な日本の文化体験を書く紀行文の部分は正直それほど面白くはなかったけど、このあたりはやっぱり読んでて一番楽しいかな。結婚した途端、よりいっそう落ち着きが感じられ、美智子妃にも自然な気遣いがみられたという皇太子の描写が印象的だった。

これを書いている松村たねはヴァイニング夫人の秘書であり親友。本書の中でも2人は常に一緒に行動している。